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シリーズプロローグ「企業を成長に導く「戦略・戦術・戦闘」の見きわめ方」

  • inokuchi
  • 3 日前
  • 読了時間: 6分

中小企業の事業戦略(新規・多角化)構築法 ①


中小企業にとって、事業の継続と発展は永遠のテーマです。しかし、限られた経営資源と日々押し寄せる経営課題の中で、どのように企業を成長の道筋に乗せていけばよいのでしょうか。こうした課題を解決する為に「新規事業」「多角化」といった事業戦略構築に焦点を当て、中小企業が成果を上げるための具体的な考え方と手法を本コラムでシリーズ化し、お届けしていきます。

人事政策などの課題は共通であり、対策もパターン化されやすく、書籍などで容易に情報を得ることができます 。しかし、事業戦略は企業ごとに「個別・固有」の課題であり 、その状況は一社ごとにすべて異なります 。更に戦略は他社の物まねではなく、オリジナルでなければ競争力になりません 。よって外部依頼には、高額な費用が発生し、更に結果が保証されるものでもありません 。その為に中小企業では外務依頼は難しく、事業戦略には着手できない状況にあります。

こうした背景から、本シリーズでは、事業戦略構築のメソッドを整理し、その手法を標準化して、皆様にご利用いただくことを目的としています 。今回は、企業成長の鍵を握る「戦略・戦術・戦闘」の各段階における課題解決の考え方から、具体的な戦略分類、そして持てる力を最大限に活かすためのステップについて解説していきます。


1.経営課題は、「戦略・戦術・戦闘」の各段階で見極める

「戦略・戦術・戦闘」という三つの階層を見きわめ、どこが最大の問題点かを把握することが、課題解決の出発点となります 。この見極めなくして課題解決を図ろうとすれば、時間も費用も無駄になり、成果は得られません 。

(1) 事業は「戦略」

「戦略」とは、どのような事業領域を対象とするかを定めることであり、企業の根底をなします 。それは社会意義の発露であり、企業の生存理由そのものです 。

事業戦略の決定において時代環境と需要変化を見誤ったならば、その事業を継続することはできません 。戦略ミスは、企業全体を誤った方向に導き、後述する「戦術」や「戦闘」の努力では決してカバーできない、最も重要な要素です 。

(2) 経営は「管理(戦術)」

「戦術」とは、経営における「管理」を指します 。営業、製造、調達、経理、労務といった各部門のバランスが重要であり、弱い所から企業は破綻していきます 。

中小企業において経営管理の課題は企業成長の足かせとなりますが 、どれだけ経営管理の完成度を上げても、それだけで企業が成長することはありません 。経営管理(戦術)は、事業戦略(戦略)が正しければ、成長段階に合わせて人材採用などで補っていくことが可能です 。

(3) 動機づけは「戦闘単位」

「戦闘」とは、現場レベルでの実行と「動機づけ」を指します 。現場の意欲一つで企業業績は左右され 、時間を惜しみ真剣に仕事に取り組んでいけば業績は変わっていきます 。例えば、一日でわずか24分の無駄をなくすだけでも、5%の付加価値が生まれます 。

しかし、戦略の無い企業ほど、現場への「プレッシャーマネジメント」が主流となりやすい傾向があります 。事業が時代から取り残され、需要が無ければ、現場の努力だけでは、戦略・戦術課題を解決することはできません 。


2.戦略・戦術・戦闘の優先順位

この三段階の中で、優先順位は明らかです。

1. 戦略ミスは、戦術ではカバーできない :事業戦略が間違っていては、経営管理(戦術)の完成度をいくら上げても、企業は成長しません 。

2. 経営二流でも、事業は伸びる :「新たな需要を見つける、創り出す」といった事業センスがあれば、ベンチャー企業のように大きく成長するチャンスがあります 。事業戦略が正しければ、経営管理は成長段階に合わせた対応で補えるからです 。

3. 戦闘単位へのプレッシャーマネジメントでは、戦略・戦術は補えない :戦略の無い企業が現場の努力だけに頼っても、根本的な課題解決には至りません 。

つまり、企業成長の成否を分けるのは、まず何よりも「事業戦略」の正しさなのです。


3.事業戦略の分類:自社の強みの見きわめ

中小企業が新規・多角化戦略を構築する際、基本となるのは、「商圏・ルート」もしくは「商品(技術)」などの自社の強み・競争力を展開することです 。まずは、自社の強みを客観的に把握することが出発点となります 。

 

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(1) 既存の製品・技術の展開(新市場開拓)

現状の製品や技術を活かしつつ、新しい市場を開拓していく戦略です 。

• 地域や領域を幅広く、柔軟な発想で可能性を探ることです 。

• 製品の使い方などの新用途向けのパッケージ変更なども含まれます 。

(2) 既存の顧客へ向けて、扱い商材を拡大する(商品・サービス拡充)

既存の商圏や販路といった経営資源を生かし 、既存顧客に向けて扱う商材を拡大する戦略です 。

• お客様への「ワンストップ性」という付加価値を提供できます 。

• プラスアルファの利益となることより、コスト競争力を持つことになります。

(3) 新規市場へ新商材で事業展開する(完全新規参入)

他社のテリトリーへの新規参入となるため、勝てる条件が必要です 。これは最も難易度とリスクの高い戦略です。

• その分野に強い社員が入ってきた時、競合企業が廃業した時などの競争要因が明確に必要です 。

• 企業廃業による事業譲渡や、商圏を受け継げる代理店に加盟するといった方法も考えられます 。

• M&AやFC加盟なども手段となります


4.持てる力とリスクを押さえる:事業戦略構築のプロセス

新規事業への挑戦はリスクを伴うため、自社の「持てる力」を正確に把握し、リスクを最小限に抑えるプロセスが不可欠です 。

(1) 現市場の可能性を押さえる

新規事業を検討する前に、まずは現状市場と自社の位置づけを明確化することが重要です 。もし、今の市場に可能性があるならば、そちらの拡大策を優先すべきです 。営業強化、プロモーション、リブランドなど、手段は多岐にわたります 。

(2) 自社の生存理由の明確化

企業が存在し、お客様から支持してもらえている要因は何なのかを把握します 。

• それが企業価値であり、伸ばすべき要因であり、新たな可能性となります 。

• その要因を活かせる分野・領域こそが、新規分野としての有力な候補となるのです 。

(3) 事前のリスク把握

新規事業へ挑戦するにあたり、持てる経営資源の限度を押さえることが必須です 。人材や資金など、企業体力の限界を超える挑戦は大きなリスクとなります 。また、新分野には未見のリスクが存在することへの対策も必要です 。


5.(まとめ)今後のコラム展開

「まずは自社の持てる力を把握する」ことがスタート地点となります 。その後、方向性が固まってから、可能性のある市場を調査し、具体的な手段を考えます 。その市場に魅力があるかを最終的に判定する市場調査は、プロセスの最後なのです。

こうした手順を踏まえて、本シリーズではシナプス経営が軸となり協力企業含む各専門家によって、そのエッセンスを以下のテーマでシリーズ化し、お届けいたします 。

• ① 自社の強みの分析法

• ② 既存市場の深耕に向けたリブラインド法

• ③ ランチェスター法による自社の競争力評価

• ④ 事業を考え推進できる幹部人材育成方法

• ⑤ 新規事業へのリスクヘッジとしての損保活用法


これらのコラムをご参考いただくと同時に、必要に応じてお気軽にお問い合わせいただければ幸いです

事業戦略
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