top of page

マーケティングを内閣支持率から考える

  • inokuchi
  • 9月8日
  • 読了時間: 5分

最近の政治動向を見ていると、不思議な現象に気づかされます。参議院選挙で大敗を喫し、党内外から辞任を求める声が高まり「石破内閣は終わった」とまで言われたにもかかわらず、その後の世論調査では支持率がむしろ上昇しているのです。本来であれば失速して当然の状況で、なぜ人々の支持が集まるのか――この矛盾した動きには、単なる政策評価やメディア論調を超えた、人々の潜在的な心理やマーケティング的な要素が大きく関わっていると考えられます。


<メディアと「顕在世論」のつくられ方>

この現象を理解するには、まずメディアの影響を無視できません。

支持率の数字はあたかも客観的な「民意」を示すものとして扱われますが、その背景には「どのテーマを取り上げるか」「どんな言葉で切り取るか」という報道のフィルターが存在します。批判的な報道が続いても、逆に“叩かれすぎている”という印象が国民の共感を呼び、支持の伸びにつながるケースも少なくありません。

つまり、表に見える「顕在世論」はあくまで氷山の一角であり、その下には「潜在世論」とも呼べる多様な感情やジレンマが横たわっています。この潜在的な心理をどう顕在化させるか――そこに、政治もビジネスも共通するマーケティングの知恵が求められるのです。


<個人の心理に潜む“流されやすさ”>

支持率の上昇を理解するには、国民一人ひとりの心理にも目を向ける必要があります。多くの人は政治に強い関心を持っているわけではなく、調査で「わからない」「どちらとも言えない」と答える層が一定数存在します。しかし、この層は単なる無関心層にとどまらず、実際には「批判は多いけれど他よりマシかもしれない」「変化は必要だが誰に託すべきか迷う」といった、複雑で矛盾をはらんだ思考を抱えている場合が少なくありません。

さらに、人間には「周囲の空気に同調しやすい」という傾向があります。メディアで「辞任すべきだ」と繰り返されれば一時的にそう感じやすくなり、逆に「叩かれすぎて気の毒だ」といった感情が芽生えると、反発として支持に転じることもあります。ネット上では特に、一部の強い声や極端な意見が拡散されやすく、それが“多数派の空気”のように錯覚される現象も後押しします。

このように、支持率の背後には「合理的な政策評価」だけでなく、「感情」「同調圧力」「反発心理」といった人間特有の揺らぎが大きく作用しています。そしてこれは、消費者が商品を選ぶときの心理プロセスとも驚くほど共通しているのです。


<企業のマーケティングにどう応用できるか>

支持率の変動に見られる人々の心理は、そのまま商品やサービスを販売する際のマーケティングにも応用できます。消費者もまた、必ずしも合理的な判断だけで購買を決めているわけではありません。むしろ「周囲がどう感じているか」「多くの人が選んでいるように見えるか」「批判されているが逆に気になる」といった、感情や社会的な空気に大きく影響を受けています。

たとえば、ある商品がSNSで批判を浴びているのに売り上げが伸びることがあります。これは「炎上商法」と揶揄されることもありますが、実際には「叩かれすぎている」「そこまで悪くないのでは」という逆張り心理や、単純に「一度試してみたい」という好奇心を刺激しているのです。政治における支持率の上昇と同じく、顧客の潜在的な感情が顕在化した結果だといえるでしょう。

マーケティングの役割は、こうした顧客心理の揺らぎを理解し、数字やアンケート結果の背後にある本音を掬い上げることです。単に「〇%が支持」「〇%が購入意向あり」といった表面的なデータを見るだけでは不十分で、そこに隠れた葛藤や未充足のニーズを引き出す仕組みを設計することが求められます。


<潜在意識を顕在化させるための実践戦略>

支持率の変動に潜む心理をマーケティングに応用するとき、鍵になるのは「数字の裏側にある顧客の本音をどう可視化するか」です。ここからは、自社の商品販売に置き換えた具体的な実践戦略を見ていきましょう。


1. 調査設計の工夫

商品やサービスに関するアンケートや顧客ヒアリングでは、自由回答や理由記入欄を充実させることが重要です。単に「購入したい」「購入しない」といった二択ではなく、「価格が気になる」「他社と比較中」「必要性をまだ感じない」など複数の選択肢を用意し、さらに自由記述を設けることで、潜在的な不満や期待を掬い取ることができます。


2. コミュニケーションのあり方の変革

販売促進の場面でも「購入者の70%が満足」といった表面的な成功事例の提示にとどまらず、迷った人の声や懸念の解消プロセスを示すことが有効です。

「購入前は価格に迷ったが、使ってみてコスト以上の価値を実感した」

「他社と比較して悩んだが、アフターサポートが決め手になった」

こうしたストーリーを伝えることで、検討中の顧客が自分の不安を重ね合わせやすくなり、購買意欲を高めることができます。


3. セグメント別分析

顧客は一様ではなく、年齢・ライフスタイル・購買動機によって求める価値が大きく異なります。

  1. 若年層には「価格」や「話題性」

  2. 子育て世代には「利便性」や「安心・安全」

  3. シニア層には「信頼性」や「サポート体制」

といったように、それぞれの潜在意識に響く切り口を明確にする必要があります。

同じ商品の魅力でも、誰に向けて語るかによって伝えるべきメッセージは大きく変わります。


石破内閣の支持率上昇が示すように、人々の判断は必ずしも合理的な理由だけで決まるわけではありません。そこには「批判に対する反発」「空気に同調する心理」「未整理の感情」といった潜在意識が深く関わっています。

商品販売においても同じです。顧客の声なき不安や期待をどう掬い上げ、顕在化させるか――それこそが、マーケティングの本当の勝負どころだといえるでしょう。


数字の裏側にある本当の顧客心理を読み解くことは簡単ではありません。しかし、その一歩が競争優位を生み出します。

ダイバーシティイノベーションは、マーケティング・人材開発・イノベーション支援を通じて、御社の「見えない課題」を「成果につながる戦略」へと変換します。ぜひお気軽にご相談ください。

マーケティング
マーケティング

コメント


bottom of page